■「コンセプトへの道」
特に、こだわりがない。
そんなオーダーも、あるのだ。
困ったものだ。
とは、捉えてはいけない。
全てをまかせてもらっている。
そう捉えるべきなのだ。
須田氏は、まず、オーダーの内容を確認する。
・外壁の色が白っぽい色か濃い色。
・シャンデリアをつけたい。
・床をコンクリートの打ちっぱなしがいい。
この3点が、今回のオーナーからの希望内容。
いわば、デザインの材料だ。
まず、これらを分析してみる。
・壁の色は白っぽい色か濃い色。
・床をコンクリートの打ちっぱなしがいい。
この2点からイメージされる言葉は、
シンプル、無機質。
コンクリートの床に白い壁をたてれば、
シンプルで無機質なオシャレな空間が
わりと簡単にできあがる。
そう。簡単なのだ。
シンプルで無機質でオシャレなだけの、
簡単な空間になってしまう。
簡単なものは、奥深さなく、飽きやすい。
それは避けたい。 |
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そこで、残り、もう1つオーダー内容を検証する。
・シャンデリアをつけたい。
ここからイメージされる言葉は、
「豪華」「装飾」のたぐい。
先の2つのオーダー内容からイメージされる、
シンプル、無機質とは反する。
困ったものだ。
とは、ここでも捉えない。
おもしろい。
そう捉えると、須田氏の頭の中で、
2つの反するイメージのパズルが始まる。
白とシャンデリアの新しい形ができ、
イメージが見え始める。
その白とシャンデリアがあるのは、
アメリカの片田舎。
そう。
たとえばサンタフェ。
ニューメキシコ州、サンタフェ。
そこは、インディアンをはじめとする、
多くの文化の集まる場所。
そこにある白は無機質の白ではない。
生活とともにある白。
生活とともに、少しづつ味のでてくる白。
そこには、豪華すぎない、無骨なシャンデリアもある。
それは、装飾ではない、生活に必要な、
本来の照明としての役割を忘れていない。 |
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須田氏はたどり着く。
・メインコンセプト
「年月がたつごとに、あじが出てくる建物」
ここは美容室なのだ。
飾りではない。
ショールームでもない。
実際にお客様に美容に関するサービスをする場所。
生きている空間なのだ。
生きているのならば、
年月が立つごとに、変化があるのが自然だ。
使っているうちに、汚れても良い。
キズができてもよい。
それが、自然。
それが「あじ」となるような建物であってほしい。
・外壁の色が白っぽいか濃い色。
・シャンデリアをつけたい。
・床をコンクリートの打ちっぱなしがいい。
特にこだわりのない、この3つのオーダー内容に、
須田氏は「こだわり」を持たせた。
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